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Dialogue

夢を追い続ける才能。『くすぶりの狂騒曲』和田正人さん・駒木根隆介さんインタビュー。

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2024.12.13

今気になるシアターカルチャーをクローズアップしてお届けする[Do it Close-up]。今回取り上げるのは、芸人ユニット「大宮セブン」を題材にした『くすぶりの狂騒曲』です。主役となるのは、M-1グランプリを目指しながら、「大宮セブン」の中でも長くくすぶり続けた漫才コンビ、タモンズ。そんな二人を演じた主演の和田正人さんと駒木根隆介さんへ、インタビューを敢行。芸人と俳優という異なる仕事でありながら、同じ表現を行う者として、今作に掛けた思いについてお伺いしました。


―今作は実在する現役お笑い芸人の役という、あまり多くはない役柄だったと思いますが、出演のご依頼があったときの率直な感想から教えていただけますか?

和田 僕は元々お笑い自体がすごく好きで、取材などで演じてみたい役を聞かれるときも、お笑い芸人という存在はいつも頭の片隅にありました。お笑いライブもたくさん観に行っていましたし、人前で喋ることも好きだったので、事務所の先輩がやっているライブに出た経験もあって。そういう今までのキャリアなどを活かせば、お笑い芸人さんの役はできるはずとどこかで思っていました。そういった中で今回のお話が来たので、すぐに絶対やろうと思いました。あとは、普通に考えて主演ですよ?(笑)。そんな何度も来ない話ですし、1つの作品を背負うことができるのというのはプレッシャーもありますけど、やはりすごく光栄なことですね。

和田正人:大波康平(タモンズ)役 

1979年8月25日生まれ、高知県出身。05年に舞台「ミュージカル・テニスの王子様」で本格的に俳優デビュー。2007年に「死化粧師 エンバーマー 間宮心十郎」でテレビドラマ初主演を務め、以降TBS系ドラマ「陸王」(17)、「笑うマトリョーシカ」(24)、フジテレビ系ドラマ「教場」(20)、NHK連続テレビ小説「ごちそうさん」(13)、「虎に翼」(24)、映画「Winny」(23)、「オレンジ・ランプ」(23)、「シサㇺ」(24)などに出演。

駒木根 確かに主演はそうですね(笑)。僕は最初に企画と脚本を読ませてもらったときから、何故タモンズさんを取り上げたいのかという意図や企画の思いがすごく明確に伝わってきて。大宮の劇場の2代目支配人でもある方が企画をやられていたのですが、俳優として自分もその気持ちに乗らせていただきたいと思いました。あとは、相方が和田さんだったというのも、かなり大きいです。

駒木根隆介:安部浩章(タモンズ)役

1981年5月2日生まれ、東京都出身。2009年に公開された入江悠監督の主演映画『SR サイタマノラッパー』が大ヒットを記録して大きな話題となる。その後も吉田恵輔、行定勲、犬童一心、藤井道人など数々の名監督の作品に出演。近年の主な出演作としては映画『最後まで行く』(23)、『ダウンタウン・ユートピア』(23)、ドラマ「OZU」「ノッキンオン・ロックドドア」(23)、舞台「台風23号」「ハムレットQ1」などがある。

―お二人は以前からお知り合いだったんですか?

駒木根 たまたま撮影の年の頭にも舞台で一緒だったり、今まで映像の仕事でも共演する機会は多くて。さすがに初対面の方が急に相方になるというのは、結構難しいところもあると思うんです。だから、この企画で相方が和田さんだったので、安心して引き受けることができましたし、色々な巡り合わせのある作品になったなと思います。

和田 そうですね。自分も相方が駒ちゃん(駒木根)で助かったよ。

―コンビを組むにはぴったりのお二人だったんですね。タモンズさんとは実際に直接会って、お話などはされたのでしょうか?

和田 撮影前に大宮セブンのライブを観させてもらって、楽屋で挨拶させてもらったぐらいです。だから、芝居について詳しく相談するということはなかったのですが、劇中でタモンズさんがチラッとだけ出演されているシーンがあって。ちょうど僕たちも現場でどうしようか悩んでいたシーンがあったので、その時に立ち話程度で話を聞くことはありました。

―ちなみにどのシーンだったのでしょうか?

和田 二人が喧嘩するシーンです。もしタモンズのお二人が意見の食い違いで喧嘩をしたら、胸ぐらを掴むぐらいの熱いものなのか、ただ淡々となのかなど、どれぐらいの規模になるのか聞きました。

Ⓒ2024「くすぶりの狂騒曲」製作委員会

―なるほど。静かなようで激しいあの喧嘩シーンは、タモンズの関係性がすごく現れているような気がして、すごく印象に残っています。先程、お笑い芸人を演じてみたかったというお話もありましたが、今回実在の漫才師を演じるという上で気をつけたことは何かありますか?

和田 タモンズに似せようとする以前に、ちゃんと漫才師に見えるようにしようということを意識しました。その順番を間違えると、タモンズには似てるかもしれないけど、漫才師には見えていないという恐れがある。だから、しっかり漫才師としてこの役で立てば、きっとタモンズにも見えてくるんじゃないかと、そんな風に思っていました。

駒木根 それは、すごく分かります。僕が演じたタモンズの安部さんは、声であったり特徴的な部分が多いので、そういう部分で取っ掛かりは多い。でも、漫才しているときはタモンズの大波さんが相手ではなく、和田さん本人と漫才している感覚がすごくありました。コントよりも漫才の方が、より個性が乗るような気もするので、それも楽しかったです。漫才の練習が、そのまま役作りになっていたような感じです。実際に和田さんの家に僕が何度かお邪魔して、漫才の練習をしたりしてました。

―すごい、劇中でもタモンズのお二人が家でネタ作りをしているシーンがありましたが、本当に同じですね。

駒木根 そうなんですよ。たまたま家が近所で、自転車で行っていたりしていました。

和田 センターマイクの代わりに棒を立てたりしてね(笑)。

駒木根 そうそう(笑)。何回か合わせたらタバコ吸いながら、どうですかねとか話し合いながら。

―なるほど、本当に漫才コンビの練習のような感じですね。

和田 台本はタモンズさんのネタが文字起こしされたものですが、映像を見ながら練習するというよりは、2人の掛け合いで作り上げていった感じでした。もうちょっとここテンポ上げてみるかとか、もう少し大きく動いてもいいかなとか話しながら、やっていました。

駒木根 特にそうしようとした訳じゃなく、和田さんとだったので、自然と漫才の稽古ができたのかなと思います。

―演じていて、ご自身と重なったりするような部分はありましたか?

和田 ネタを書いて漫才を作り上げているのは大波さんの方で、安部さんはそこまでお笑いに興味がないタイプだと聞いて。僕も割と何でもすぐに自分で決めたがったりするタイプなので、そこは似ているかもと思いました。実際に僕たちが練習してるときも、こうしてみないかとお節介で提案してみたりして、駒ちゃんはそれをすんなり受け入れてくれたりしていたので。余談ですけど、実生活で結婚式を開いたとき、9割5分は自分で段取りしました。

駒木根 そうなんですね! 自分はそういう段取りとか絶対できない(笑)。そういう意味では、本当にバランスが良かったのかもしれないですね。僕は安部さんと似ているというか、体内で流れているリズムに近しい部分があるような気がしていましたね。

和田 それ言わんとすることは、すごく分かる気がする。

―今作は、売れることを目指して何度も壁にぶつかる芸人の生き様が描かれていますが、そういった夢や目標を諦めてしまいそうになったことや、挫折した経験などはありますか?

和田 僕はずっと陸上をやってきて、それを一回諦めているので、挫折ばっかりです。でも、そういうときに何で自分は上手くいかなかったのか考えるようになりました。例えば同じトップレベルのF1マシーンに乗っていても、運転手が一流じゃないと勝てない。身体だけじゃなく、メンタルや人間性を強化することが必要なんだと感じるようになりました。

駒木根 本当に申し訳ないんですけど、僕はあまり大きな挫折の経験をしたことがなくて…(苦笑)。

和田 もしかしたら、このくらいの年齢まで役者をやっている人に挫折の経験とか聞いても、あまり出てこないかもしれないですよね。みんな好きで続けているから、苦しいと感じなかったりする。

駒木根 囲碁将棋さんが今作のコメントで、「今までタモンズがくすぶってるなんて一回も思ったことがなかったけど、今回の映画で客観的に見て、初めてタモンズがくすぶってたと知った」というようなことを言っていて(笑)。フィルターを変えないと、分からないのかもしれないですよね。

和田 当事者たちは、くすぶってるなんてたぶん思ってないんですよね(笑)。でも、それが続ける才能かもしれないですよね。

駒木根 特にこの仕事は、明確な点数や勝ち負けが出るわけじゃないですしね。

和田 探求していく面白さというか、やればやる程ちゃんと積み重なっていく仕事だなと思います。

駒木根 時間が少し経ってから、間違ってなかったのかもと思えるのかもしれないですね。

和田 そうだね、まさに熟成肉だよね。

―芸人はお笑いで、お二人は芝居を通して誰かの感情を動かすような表現をされていますが、今作を通じて共感した部分はありますか?

和田 芸人さんと違って、笑わせるとか明確な目的が役者にはあまりないんです。舞台に立ったときに、ここで笑ってもらえたら、感動してもらえたらというのは、演出として考えますけど。自分たちが感動して、相手とのやり取りが楽しくて悔しくて、という感情を一生懸命表現しているので。

駒木根 そうですね。そういう意味では、芸人さんはソロでもコンビでも、主体性の強さが求められるお仕事ですけど、僕たちのような俳優は、結果的にそうなってくれればいいな、と思いながらやっているかもしれないです。

和田 言ってしまえば、俳優もカメラさんや、録音部さん、照明さんという人たちがいる中の一部署でしかないので。映画はみんなで作って、この作品のメッセージが一人でも多く伝わるようにと頑張っています。


story

「大宮セブン」が活動する大宮ラクーンよしもと劇場は少ない客、会社からの非難や悪口などなどお世辞にもその扱いは良いものとは言えなかった。追い打ちをかけるようにコロナ禍により劇場などの活動が停止し、収入低下などにより状況は悪化の一過を辿っていた。そんな中、「大宮セブン」メンバーの「すゑひろがりず」がM-1グランプリで決勝進出をはたし、YouTubeでの活動から人気を得て大宮セブンの活動にも変化の兆しが見え始める。さらに続くようにR-1グランプリでのマヂカルラブリー野田の優勝、M-1グランプリでマジカルラブリーが優勝を果たし一気に大宮に注目が集まる。メンバーも各賞レースで結果を残し、大宮セブンの躍進が始まる。しかし初期メンバーであるタモンズは仲間の活躍を横目に、飛躍のきっかけを掴めないままもがき苦しんでいた。現状を打開するためにコンビ名を改名したり、果てには新たにメンバーを追加してトリオになろうとしたり、明確な指針もないまま迷走を始める。そんな彼らの様子を間近で見ていた大宮セブンのメンバーは夜中に相談に乗ったり、自身の問題と重ねたりしながらタモンズを何とか支えるのであった。メンバー間の友情、応援などを経てタモンズは芸人を目指した時の純粋な気持ちを思い出し、ラストイヤーのM-1グランプリへ最後の挑戦に挑むのであった。

出演:和田正人 駒木根隆介 辻凪子 土屋佑壱 永瀬未留 / 徳井義実(チュートリアル) 岡田義徳ほか
監督:立川晋輔 脚本:中村元樹
配給:イオンエンターテイメント 吉本興業
Ⓒ2024「くすぶりの狂騒曲」製作委員会

公式サイト:https://kusuburi.jp
X:@kusuburi_movie
Instagram:@kusuburi_movie

photo:Cho Ongo(@cho_ongo)
interview&text:Sota Nagashima(@sota_ngsm
ヘアメイク:小林純子
スタイリスト:田村和之

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