STORY
Do it Story2022年10月、私たちは「CINEMA de Meets」というイベントで、スクリーンの設置と上映(『バック・トゥ・ザ・フューチャー』)のサポートを行いました。
このイベントを主催したのは、商業施設でもなければ行政機関でもなく、民間のデザイン会社です。会社が保養施設を併設する三浦市の土地で小規模に開催されましたが、そこには参加者たちの活発な対話と笑顔があり、イベント体験を通じた“地域コミュニティの活性化”がありました。
民間企業がなぜ、こうしたシネマイベントを行ったのか。この「CINEMA de Meets」のストーリーを、イベントを企画した加藤美里さんにお伺いしました。加藤美里さま 株式会社 リュウズデザイン代表取締役CFO
【目次】
・社会貢献事業「みうらみーつ」を始めた理由
・シネマイベントを開催して感じた子どものパワー
・これからの「みうらみーつ」でやりたいこと
01社会貢献事業「みうらみーつ」を始めた理由
――まずは加藤さんがCFOを務める会社「リュウズデザイン」について教えてください。
リュウズデザインは、1988年に夫と創業した、銀座に本社を構えるトータルデザインプロダクションです。主な業務内容は、グラフィックデザインや動画制作、ウェブ制作など。クライアントには、大手の消費材メーカーや飲料メーカーなどがあります。
――今回開催された「CINEMA de Meets」は、会社の事業の一環で行ったとお伺いしました。
私たちは「みうらみーつ」という社会貢献事業をとおして、会社と縁がある三浦市の土地で、様々なイベントを開催しています。過去にはこの場所で、音楽会やお茶会を行ったり、近くの小学校の遠足が行われたりしてました。年代やコミュニティの垣根を越えて、人と人が対話を体験する空間をつくろうとしています。
――なぜ、そうした社会貢献事業を行っているのでしょうか?
「みうらみーつ」は、「未来の子どもたちを育てること」をビジョンに運営しています。その背景には、昨今の社会を見て抱く、子どもたちの教育への危機感があります。コロナ禍でマスクを外せない、対話ができない、隣の人が物を落としても知らんぷりをしている。それでいいのかと思うのです。そうではない健全な他者とのコミュニケーション力を育みたくて、この事業を始めました。
――イベント体験の中で、子どもたちのコミュニケーション能力を養うと?
そうです。簡単に言うと、子どもたちにもっと色々な大人と触れ合ってほしいんです。
私は、血縁だけではない他人とのつながりが、生きる上ではとても大事だと思っています。こっちの大人とはサッカーをして、こっちの大人とはゲームをしてというように、子どもは本来、多くの人に触れ合い育つのです。そういう大人や友達とのつながりの場を、子どもたちに提供したいと思いました。
――そうした思いを持つ中で、今回シネマのイベントを開催しようと思った理由をお聞かせください。
子どもたちを驚かせるイベントがやりたかったからです。大きなスクリーンで映画を観せて、「うわー!」と思うような体験をつくってあげたいと考えました。
そして、その非日常な体験の中で、「隣の人の名前だけでも覚えて帰ろうね」と。隣のおばあさんの名前を聞いて、「元気でいてくださいね」って声をかけようねって。そういうコミュニケーションを覚えていってほしいと思いました。
――Do it Theaterにシアター運営を依頼した理由も教えていただけますか?
Do it Theaterさんのことは、共通の知人をとおして知りました。第一印象からいい方々だなと思い、お人柄に惹かれて、イベントを手伝ってほしいとお願いしました。
横須賀市での大規模なイベント(ドライブインシアター2020 meets KINTO)や、品川の大きなイベント(品川オープンシアター)のことも知っていたので、ああいう巨大なイベントを運営する会社に、私たちの小さなプライベートプレイスでやることをお願いするとどうなるのだろうと思いました。コスト面では不安がありましたね。
――私たちは、加藤さまのビジョンにとても共感したので、パートナーに選んでいただけて光栄でした。普段のイベントづくりとは異なり、今回は空間美術のプロデュースなどをほとんど行わずに、裏方として上映サポートに徹することでコストを抑える提案をさせていただきました。
お見積り時に、様々なプランを分かりやすくご提案いただいたので、とてもありがたかったです。
02シネマイベントを開催して感じた子どものパワー
――実際にシネマイベントを開催した際は、どのような点を大事にしましたか?
多くの人たちを巻き込んでつくることを心掛けました。例えば、地元のカフェや知り合いの大工さんに出店してもらったり…。その出店では子どもたちが店員をやっていたんですよ。
――子どもたちが、「ポップコーンはいかがですか?」と大きな声で販売している光景が見られ、温かな雰囲気がありました。イベントを一緒につくる体験まで与えられていることに私たちも感動しました。
そうですね。それも彼らにとって、いい経験になるのだと思います。子どもって本当にすごいですよ。「あなたに任せるよ」と言ったら、やる気になってやるんです。物凄い力がありますよね。――イベントを開催して、嬉しかったことはありますか?
単純なことですけど、「またやってほしい」という人がたくさんいたことが嬉しかったです。また、子どもたちだけでなく、招待した大人やお年寄りも楽しんでくださいました。三崎の合唱団の先生がおみえになっていたのですが、その先生は82歳なんですね。その方が「楽しかった」と言ってとても喜んでくださったのが印象的でした。
――年齢に関係なく、人と人の触れ合いが実現できていて、素晴らしいと思いました。逆に見つかった課題点はありますか?
次は、企画の段階からもっと人を入れたいと思いました。今回は私が進めましたけど、実行委員会を組織して、地域の人や子どもたちをその中に加えたい。みんなで、「あれしよう、これしよう」と話し合いながら、イベントをつくっていけたらと思いました。子どもたちにはポスターを作ってもらって、学校に貼ってもらってもいいですね。そういうところから、様々な体験をしてもらいたいと思います。
それと、やはり会社の事業ですので、ビジネスとして成り立たせたいという気持ちもあります。今回はほぼ持ち出しで開催したのですが、継続していくには収益のこともきちんと考えたいと思っています。――Do it Theaterのイベントサポートについてはいかがでしたか?
素晴らしかったです。時間ぴったりに映画は始まったし、音も聴きやすくて、何のトラブルもなく終わりました。イベント中は私も楽しんでしまって、Do it Theaterさんの努力に気づかないくらい、粛々と進めてくれました。期待どおりでしたね。
私はバック・トゥ・ザ・フューチャーを吹き替えで初めて観たのですが、今までは全然理解ができていなかったと思うくらい内容が良くわかり、吹き替え版の良さに気がつきました(笑)。みなさんがとても褒めてくれたので、大成功だったと思います。
03これからの「みうらみーつ」でやりたいこと
(株式会社リュウズデザインCEOで、旦那さまの加藤昇様と)
――今後は、この「みうらみーつ」をどういった場所にしていきたいのでしょうか?
もっと、三浦市内外から人が集まる場所にしたいと思います。やんちゃな子の遊べるスペースにしたり、泥んこ教室を開いたり、ここで子ども劇団をつくってもいいかもしれない。みんなで脚本を書いて、1か月に1回集まってとかね。
あとは子どもに限らず、大人や老人向けのイベントもやりたいです。落語会とか、ママたちのための子育て教室とか。主催は私たちでなくてもよいのです。この「みうらみーつ」という場所を使って、何かをやりたいという人たちが名乗り出てくれたら、応援していきたいです。
――シネマイベントはまた開催しますか?
ぜひ、やりたいですね。『東京物語』みたいな昭和の映画を子どもたちに観せるイベントなんて面白そうですよね。おばあちゃんと孫が一緒に見て、子どもが「あ、この映画、おばあちゃんが若い頃のだ」と感じるだけでも思い出になるでしょう。そういうことができるといいと思います。
――今回、「みうらみーつ」のイベントをサポートさせていただいて、改めて体験価値をつくることの大切さに気付きました。この場所を持続させていくためにも、シネマイベントだけではなく、また何か協力させていただけたらと思います!
ぜひぜひ!企画があったら持ってきてください。また何か一緒にやりましょうね。
ライター:前多勇太