STORY
Do it Story「神田多壱小路(かんだたいちこうじ)」は、千代田区内神田のセントラルホテル跡地に2024年10月にオープンした新しい広場です。オープン当日と翌日にはシアターイベントが開催され、両日ともにおよそ30名の子どもたちが映画鑑賞のために広場を訪れました。
このシアターイベントを主催したのは、NTT都市開発です。開催にあたっては、新たな広場でのシアターイベントを通じて、神田のまちにつながりを生み出す強い思いがありました。今回は「まちづくりと野外シアターの親和性」というテーマで、NTT都市開発の笹原剛さま、篠永信一朗さま、尾ヶ井大希さまに、このイベントのストーリーを振り返っていただきました。
左:篠永信一朗さま NTT都市開発株式会社 開発本部 再開発事業推進部
中央:笹原剛さま NTT都市開発株式会社 開発本部 再開発事業推進部 担当課長
右:尾ヶ井大希さま NTT都市開発株式会社 開発本部 再開発事業推進部
01イベントを開催した理由
――まずはNTT都市開発さまのまちづくりの特徴を教えてください。
笹原 NTT都市開発は、まちづくりにおいて行政や地域の方々と密接な関係を築き、地域の特性・魅力をさらに高める開発に継続的に取り組んでいる総合デベロッパーです。私たちの特徴は、数字だけにとらわれず、地域社会にとって意義のある開発を行い、エリアの課題を解決していくことにあります。
篠永 通信サービスを全国的に展開するNTTがバックグラウンドにもあるので、公共性の高い土地活用を行い、まちの方々のためになる都市開発を念頭に置いて都市開発を行っています。
――今回のイベントも、地域のために開催されたものと伺っています。神田のまちが持つ特徴や課題について教えてください。
笹原 神田は、古くから住む方々が人と人のつながりを大切にしている地域です。しかし最近では、新しいマンションが増え、新たな住人も増加しています。そのため、古くからの住人と新しい住人とのつながりがまだ十分に形成されていないのが現状です。
篠永 人口は増加しているポテンシャルの高いまちですが、昔からのネットワークが強固である反面、新しい住人がその輪に入りづらい状況があります。そこで今回、人と人がつながるきっかけとして、シアターイベントを開催しました。
――今回イベントが行われた広場も、NTT都市開発さまの運営する広場ですよね。
笹原 神田のもう1つの課題として、人々が集う広場の不足がありました。そこで、今回我々は、ホテル跡地を利用して「神田多壱小路」という新しい広場を整備しました。
篠永 この辺りは多町一丁目という地名で、地元では「タイチ」と愛着をこめて呼ばれています。そこで、この広場の名前も「神田多壱小路」にさせていただきました。この広場でさまざまな施策を行うことで、人が集い、新しいつながりを生みだして行けたらと考えています。
「神田多壱小路」看板
02Do it Theaterとのイベントづくり
――神田に古くから住む方と新たに住む方がつながるために、新しい広場でシアターイベントを企画したことが分かりました。その中で、今回Do it Theaterをパートナーに選んでいただけたのはなぜでしょうか。
尾ヶ井 弊社の物件でもある品川シーズンテラスでも、長年シアターイベントを手がけていただいている関係からご紹介いただきました。お話を聞いていく中で、Do it Theaterさんは映画の上映だけでなく、エリアマネジメントや空間づくりにも注力していると分かり、依頼を決めました。
――Do it Theaterに依頼するにあたって、なにか懸念はありませんでしたか?
篠永 品川のイベントは大規模ですが、今回の広場はスモールスペースですので、そうした場所でもシアターイベントができるのかは懸念がありました。
笹原 ホームページを見させていただいて、100人ほどのイベントの実績も多くあることが決め手になりました。規模の大小に関係なく空間をつくれると分かり、またエリアマネジメントの一貫としてのイベントづくりにも長けているので、安心してお任せすることができました。
当日は、広場の横で子ども向けの「提灯色塗りワークショップ」を開催しました。このワークショップで子どもたちが作成した提灯は、広場の入り口に飾られ、神田らしい会場装飾の一部として活用しました。また、映画の上映前には広場におもちゃを置き、「こども広場」を設けて、地域の子どもたちが集い、つながる場を提供しました。
――実際にイベントづくりをする中でのDo it Theaterの印象はいかがでしたか?
尾ヶ井 本当に細かい部分まで、こちらの要望を聞いてくださいました。また、シアターイベントだけではなく、より良いイベントにするための仕掛けを常に考えてくださり、提灯のワークショップなど新たなアイデアの提案もくださいました。イベント当日まで、一緒に駆け抜けてくださったと思います。
篠永 ワークショップやこども広場など、映画までの時間を子どもたちが楽しめるご提案をいただけたのは、とてもありがたかったです。提灯にも「神田」という文字を入れていただくなど、地域の方に喜んでいただける空間を細かくつくりこんでいただきました。映画が上映される前のスクリーンに「神田」の文字が出たのも、まちの方々に喜んでいただけました。
笹原 まさに画一的にならず、この土地らしいイベントづくりをしてくださいました。神田のまちの特徴や特色も把握してくださり、セットをつくってくださったのは、非常に優れていたと感じます。
篠永 あと上映作品も、お子さんから親御さんまで幅広く楽しめる映画を複数提案してくださったのが助かりました。
尾ヶ井 尺が長いものから短いものまで提案してくださり、我々が自由に選べるようにしてくださったと感じています。
03イベントで生まれたつながり
――イベントが終わってみて、率直にどのような感想を抱きましたか?
笹原 この2日間、みんながただ通過するだけだった場所に、多くの人が訪れました。通りがかりの方が「ちょっと見ていこう」と立ち寄ってくださるケースも想像以上に多く、その点は成果を感じました。
篠永 広場がオープンして初のイベントでしたので、広告などはほとんどしませんでしたが、新しくできたマンションからも子どもたちが来てくれていましたし、昔から代々住んでいる家の子たちも、ランドセルを置いてすぐに遊びに来る光景が見られました。土曜日の夜に来られていた方に「何でイベントを知ったのか」を尋ねると、「ママ友の間で噂になっていた」とおっしゃっていたのも嬉しかったです。
笹原 映画中に、子どもが来ることは想定していましたが、映画の前後にも子どもたちがキャッキャと走り回っている姿が見られたのも新鮮でした。神田駅前のエリアは普段子どもを見ることが本当に少ないので、その点も想像していない嬉しかったことでした。
尾ヶ井 我々がまちづくりを進めるにあたり、今後どのような広場をつくっていくか検討する中で、その答えの1つを地域住民の方にお示しできた有意義な映画イベントになったと思います。
――「人と人のつながりをつくる」という目的と、野外シネマの親和性については、なにか感じられたことはありますか。
尾ヶ井 映画はひとりで楽しむ印象がありましたが、屋外で上映することによって友だちや親御さんと来て、一緒に楽しさを共有する姿を見ることができました。
篠永 話しながら観れたり、寝ころびながら観たり。小さい赤ちゃんを抱っこされているお母さんも、気にせずに楽しめたり…。それぞれ自由で柔軟な観方をされていたのが、座席が決められていないオープンシアターだからこそだと思いました。
また、小さい子たちが映画を観ている光景を、おじいさんが隣で日本酒を飲みながら見守っていたりして、それも映画館では見られない素敵な光景だと思いました。
笹原 昔から住んでいる方と新しい方、お年寄りからお子さんまで多世代で楽しめるコンテンツだと、あらためて認識しました。
――これから、この神田のまちづくりを進めるにあたっての展望も教えてください。
篠永 今回いらっしゃった方々の意見を伺う中で、遊び場やイベントができる場所が不足していて、子どもたちがまちを十分に楽しめていないことを改めて実感しました。子どもの数は増え続けており、ポテンシャルの高いまちです。今後は大きな広場や小さなポケットパークなどの整備を進め、様々な企画が実現できる環境を整えていきたいと考えています。
また、神田の方々からは「不易流行」という言葉をよく耳にします。神田特有の温かさや粋な雰囲気を保ちながらも、現代のまちや社会に必要なものを取り入れていく。そのようなバランス感覚を持った方が多いまちです。これからも新しい試みに挑戦しつつ、昔から続く人と人のつながりの温かさを大切にしていきたいと思っています。
笹原 神田のまちづくりには長期的な視点で取り組んでおり、エリアマネジメントと連動したイベントの重要性を感じています。これからも継続的に、人と人がつながるイベントや場所づくりを進めていきたいと考えています。
尾ヶ井 「神田と言えばこれ」というコンテンツやイベントを作ることで、神田に住まれている方も、神田以外から来られる方々も、愛着を持てるまちになっていくと思います。こうしたまちづくりを進め、そのコンテンツの候補の一つとしてシアターも含めて考えていきたいと思っています。
04イベント詳細
『つながる神田プロジェクト』
開催日:2024年10月11日(金)・12日(土)
会場:千代田区内神田 神田多壱小路
コンテンツ:シアター上映・提灯の色塗りワークショップ・エリア内周遊抽選会・子ども広場(子ども向け遊具の設置)・利酒会
上映作品:(DAY1)『ミニオンズフィーバー』/(DAY2)『SING』
主催:NTT都市開発株式会社
シアタープロデュース:Do it Theater