MAGAZINE
Do it MagazineDo it Theaterが、現在注目のシアターカルチャーをクローズアップしてお届けする企画[Do it Close-up]。
今回は、ファンタジーと現実のあわいを描いた映画『シークレット・メロディ』に出演する、韓国の俳優ウォン・ジナさんにインタビュー。
健やかさと秘密を抱えるヒロイン・ジョンアをどう演じたのか。脚本を初めて読んだときの印象から、自身との共通点、そして記憶に残る映画体験まで。
“ときめき”と“感情のリアリティ”を大切に語る彼女の言葉から、本作の魅力をひもときます。
01ジョンアという人物に出会って
――脚本を初めて読んだとき、ジョンアにはどんな印象を持たれましたか。
原案のジョンアは少し病弱で繊細なイメージでしたが、今回の脚本では健康的で健全な印象が強く描かれていました。だからこそ「秘密」という要素ばかりが強調されないように、観客が彼女の感情を自然に追えるようにしたいと考えました。
――ご自身と重なる部分はありましたか。
ジョンアは気持ちを隠すのが苦手で、状況もそのまま出てしまう。私も似ていて、不器用に隠そうとすると逆に伝わってしまうんです。だからこそ、率直に表現するところは彼女と私の共通点だと思いました。
また、初恋のときめきに不器用になる姿にも共感できました。忘れていた記憶を呼び起こすように、その気持ちを再び味わいながら演じました。
ウォン・ジナ(ジョンア役)|1991年3月29日(34歳)、韓国・天安市出身。ドラマ「ただ愛する仲」「ライフ」(18)「僕を溶かしてくれ」(19)「先輩、その口紅塗らないで」「地獄が呼んでいる」(21)「ユニコーン」(22)などでは等身大のラブストーリーから追い詰められたシングルマザーまで幅広い役を演じきり定評を得る。近年はパク・ヘス主演の演劇「ファウスト」(23)でヒロインのグレートヒェン役をつとめその可憐な姿で存在感を見せた。映画は『キャッチボール』『中古、ポール』『今日の映画』(15)『バイバイバイ』『退魔:巫女の洞窟』『奴隷の島、消えた人々』『密偵』(16)『鋼鉄の雨』『プレゼント』(18)『金の亡者たち』『英雄都市』(19)『声/姿なき犯罪者』『ハッピーニューイヤー』(21)など主役級ではなかったものの多数出演。本作は王道の「ラブストーリーのヒロイン」という初の大役を演じた。最新作は近日配信のドラマ「アイショッピング」(Netflix)。
02ファンタジーを現実に落とし込む
――ジョンアを演じるうえで、難しかったことや意識していたことはありますか?
『シークレット・メロディ』はファンタジー色が強く、科学的に説明できない要素も多いんです。だからこそ、俳優の感情が映画を導く“軸”になると思いました。
常に「秘密を抱えたとき、愛する人にどう振る舞うのか」を想像しながら、ジョンアとして自然に反応できるよう心がけました。
――演じる上で、参考にした作品や役はありましたか。
実は、なるべく他の完成された作品は観ないようにしています。その映画ならではの感情や空気を大事にしたいからです。今回も原案はもちろん知っていましたが、改めて見返すことはせず、むしろ頭の中から消すようにしました。
代わりに、撮影現場で一緒に過ごす共演者やスタッフとのやり取りを通して、感覚をつかんでいきました。監督や俳優同士の会話の中で自然に出てくる感情や表情こそ、この作品を支えるものだと思ったからです。
――監督や共演者とはどんな話をされたのでしょうか?
監督は細かい演技指導をするよりも、自由に任せてくれました。ただし、特殊な設定をどう自然に見せるかについては、現場でたくさん話し合いましたね。
「この場面では周囲にどう見えているのか」「自然な動きにするにはどうすればいいか」など、暗黙のルールを共有しながら演技を作っていきました。
03言葉の選び方と残したい風景
――本作は古い物語をベースにしていますが、現代の観客に届けるうえで工夫されたことは?
若い人が観たときに「古臭い」と思われないか、心配がありました。だからこそセリフにはできるだけ率直でシンプルな言葉を選び、重くなりすぎないように意識しました。
キャスト同士で「今の人が聞いてどう響くか」を何度も確認して、自然に受け止められる表現を探しました。
――特にお気に入りのシーンを挙げるとしたら?
自転車で校庭を走るシーンや、川辺を二人で歩くシーンです。クラシカルでありふれているけれど、普遍的で、とても印象に残っています。日常的な時間だからこそ、映像として強く焼き付いています。
――もし現実にユジュンのような男性が現れたら、どうでしょう?
きっと誰でも同じだと思いますが、心がときめくと思います。特に若い頃は迷いや悩みが多い時期ですが、そんなときに気持ちを分かち合える相手が目の前にいることは、とても大切で特別な経験になります。
もちろん私も同じで、きっと幸せを感じるはずです。
04映画とともにある暮らし
――記憶に残っている映画体験を教えてください。
私は季節ごとに観る映画を決めています。冬になると『ハリー・ポッター』を最初から見直し、夏には『PERFECT DAYS』を観ました。季節の空気と映画が重なると、特別な体験になるんです。
家ではプロジェクターで観るのが習慣です。夜に照明を落とし、飲み物を一杯だけ用意して、静かな時間に映画と向き合う。昼間は活動的に過ごして、夜は映画の世界に沈み込む――それが私の映画との付き合い方です。
05作品情報
全国公開中
映画『シークレット・メロディ』
(Story)
ドイツで将来を嘱望されたピアニスト・ユジュンはスランプになり、実家のある韓国へ静養のため帰国する。編入した音楽大学の敷地を歩いていたとき、ふと聞こえてきた美しいメロディに魅かれ、練習室を尋ねる。そこで古いピアノを弾いていたのは、同じ3年生のジョンアだった。初対面にもかかわらず、目が合った瞬間、運命の音に導かれるように惹かれ合う二人。その日から毎日お互いを探し、逢えた日は一緒に過ごしていた。息のあった連弾、お散歩からのデートにはじまり、ピアノ・バトルに出たり、CDショップで好きな曲を聴かせ合ったり、自転車を二人乗りしたり、おうちデートで食事したり、コンサートに行く約束をしたり…。出逢って間もない中、すでにお互いがなくてはならない存在となっていた。しかし、ある日を堺に、二人は突然逢えなくなってしまう。なぜ…? あらゆる手を尽くしても、なんとかしてまた逢いたい二人。そんな中、1本の電話をきっかけに、彼女がいる場所に向かって走り出す彼。そして彼女もまた、彼の元へと向かっていた…!
英題:Secret:untold melody
原題:말할 수 없는 비밀
原案:ジェイ・チョウ
監督:ソ・ユミン
脚本:ソ・ユミン、ユ・スンヒ、シン・ウンギョン
出演:ド・ギョンス、ウォン・ジナ、シン・イェウン、
ペ・ソンウ、カン・マルグム
本国公開日:2025年1月27日
2025年|韓国|韓国語|1時間43分|G|字幕翻訳:根本理恵
©️ 2025 SOLAIRE PARTNERS LLC & HIVE MEDIA CORP ALL RIGHTS RESERVED
配給:クロックワークス
HP:https://klockworx-asia.com/secretmelody/
公式X:https://x.com/secretmelody_jp