MAGAZINE
Do it Magazine01俳優 若葉竜也さんのシゴトとシネマ
「役者をもう少し続けてみようかなと思えた作品なんです」
映画との出会いはいつも偶然で、何気なく観た映画が、人生の一本になったりする。【シゴトとシネマ】では、仕事や生き方に影響を与えた、働くことの原動力になっている映画とエピソードを教えていただきます。今回は、映画『街の上で』主演・俳優の若葉竜也さんの人生を揺るがせた映画と、仕事への想いをご紹介。
02作品名
『アイデン&ティティ』
監督:田口トモロヲ
【STORY】
「やらなきゃならないことをやるだけさ。だからうまくいくんだよ。」
ある時代のある年、オーディション番組が引き金となり、日本中に一大バンドブームが巻き起こった。ところが潮がさっと引くようにブームは終焉を迎え、中島率いる“SPEED WAY”もまさに現実と理想の狭間で揺れ動いていた。不安で一杯の中島は唯一の理解者である彼女をも裏切る毎日を過ごしがち。そんな悩める中島の目の前に、突然ロックの神様が現れ、ボブ・ディランの歌で啓示を与える。彼は果たして何者なのか? “SPEED WAY”そして中島と彼女との行方は・・・?
「アイデン&ティティ」DVD発売中
価格:2,500円+税
発売元・販売元:東北新社
©2003『アイデン&ティティ』製作委員会
03作品との出会い
学生時代、学校でバンドを組むブームがあって、僕も友達と組んでいたんですけど、2003年頃、映画や音楽が好きなやつらと居たので「峯田(和伸)さんが主演のめっちゃ面白い映画があるよ」って学校で話題になって、観に行ったのがきっかけでしたね。本当に衝撃的だったんです。今でも観るくらい好きな映画ですね。
©2003『アイデン&ティティ』製作委員会
04仕事とのリンク
20代前半の頃は、『アイデン&ティティ』の本当の音楽とか、ものを作るというところに役者としても同調していたんですけど、今の年齢になると、バンドとはいえ社会だし、やっぱり“人ありき”だからという、大人の視点もわかるようになったところはあります。あと、こういう映画に出たいなと思って、役者をもう少し続けてみようかなと思えた作品なんです。
05作品から受けた影響
1回で満足する映画じゃなくて、もう1回観てみようってなる映画に参加したいなという気持ちは、『アイデン&ティティ』を観てからずっと続いているかもしれません。そして、そういう風に自分が関わった映画を、誰かがそう思って観てくれたら良いなって勝手に思っています。
06映画によって解決された悩み
僕、仕事したくねえ~ってなる時があるんです(笑)。シンプルに働きたくない、みたいな(笑)。でもそういう時に『アイデン&ティティ』を観ると、もうちょっとやってみようかなって気持ちになります。熱を持たせてくれる作品ですね。
夢と現実、人と人、希望と絶望、人間の永遠のテーマをファンタジーも含みながらサラリと魅せるとこがまた、カッコ良いんですよね。何回も観たいと思える素敵な映画です。
©2003『アイデン&ティティ』製作委員会
07映画『街の上で』インタビュー
――まさに『街の上で』も「また観たい」と思うような映画になっていると思います。
そうなってくれたら良いですけどね(笑)。何も起こらないので(笑)。でもそれでいいやと思いますし、今泉さんとも寝ながら観れる映画だよねって話していました。
――若葉さんから見た今泉監督作品の魅力を教えてください。
映画でご一緒する前から、今泉さんの映画はほとんど観ていました。今泉さんの映画って、観て人生が変わることは無いと思うんです。だけど、なんか「お守り」みたいな、お気に入りのキーホルダーを持ってるみたいな感覚になれる映画を作っている監督だなという印象がありました。そういう温度の映画を作る人なので、一緒にいつかやりたいと思っていて、『愛がなんだ』で声をかけてもらった時は、即答したんです。
そしたら今泉さん、本当に・・・ダメな人でした(笑)。本当にダメな人だから、こういう映画を撮れるんだなって思うし、何となく合うんだろうなというのも、ご一緒する前から思っていました。ダメな大人たちが集まって一本の映画を撮ったので、奇跡的なシーンがたくさん撮れたし、うまくいったのかなって思います。
(c)「街の上で」フィルムパートナーズ
――若葉さんにとって下北沢はどんな街ですか?思い入れはありましたか?
思い入れは全く無かったんです(笑)。むしろ高円寺の方がよく居るので、次は高円寺舞台の映画をやりたいですね(笑)。でも逆に高円寺には思い入れがあるので、もう少し自分の温度が高くなってしまっていたかもしれません。なので、荒川青という人物のあの温度感というのは出ていなかったかもしれないです。個人的に、あの青の温度感はかなり好きです。
――これから『街の上で』を観る方に向けてメッセージをお願いいたします。
今、あの人は何をしているのかな、あの古着屋に行ったら青が居るんじゃないかなって実在する感覚を残して撮影をしていたので、“居るかも”って思ってもらえたら嬉しいですね。映画が終わったあとも、本当に下北に行ったらこんなやつが居るんじゃないか、青が本当に歩いてるんじゃないかって思っていただけたら。あと、「このシーンが好き」というシーンを皆さんがそれぞれ見付けてくれたら嬉しいなと思います。
08プロフィール
若葉竜也(わかば りゅうや)
1989年6月10日生まれ。作品ごと違った表情を見せる幅広い演技力で数多くの作品に出演。映画『葛城事件』(16年)で、第8回TAMA映画賞 最優秀新進男優賞を受賞。主な出演作品に、ドラマ「ブラックスキャンダル」(18/YTV)、連続ドラマW「コールドケース2〜真実の扉〜」(18/WOWOW)、「令和元年版 怪談牡丹灯籠」(19/NHK)、映画『雷桜』(10/廣木隆一監督)、『GANTZ Ⅰ・Ⅱ』(11/佐藤信介監督)、『DOG×POLICE』(11/七高剛監督)、『明烏』(15/福田雄一監督)、『美しい星』(17/吉田大八監督)、『南瓜とマヨネーズ』(17/冨永昌敬監督)、『サラバ静寂』(18/宇賀那健一監督)、『パンク侍、斬られて候』(18/石井岳龍監督)、『愛がなんだ』(19/今泉力哉監督)、『台風家族』(19/市井昌秀監督)など。2020年は『ワンダーウォール 劇場版』(前田悠希監督)、『朝が来る』(河瀬直美監督)、『生きちゃった』(石井裕也監督)など公開待機作が多数。
(c)「街の上で」フィルムパートナーズ
映画『街の上で』
https://machinouede.com/
photo:Natsuko Okanobu
edit&interview:Sayaka Yabe