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Do it Magazine01漫画家 下窓まめ子さんのシゴトとシネマ
「海外で仕事をしている時、この映画を思い出すことがあります」
映画との出会いはいつも偶然で、何気なく観た映画が、人生の一本になったりする。【シゴトとシネマ】では、仕事や生き方に影響を与えた、働くことの原動力になっている映画とエピソードを教えていただきます。今回は、アメリカ在住の漫画家 下窓まめ子さんの人生を揺るがせた映画と、仕事への想いをご紹介。
※今回はオンラインにて取材を行いました。
02作品名
『ビフォア・サンライズ 恋人までの距離』
監督:リチャード・リンクレイター
『ビフォア・サンライズ 恋人までの距離 <ディスタンス>』DVD ¥1,429 +税
ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント
© 1995 Castle Rock Entertainment.
03作品との出会い
日本からパリへ向かう飛行機の中で観ました。2015年に渡英したのですが、パリのシャルル・ド・ゴール空港を経由して、ユーロスターという電車でイギリスに入ろうと思っていたので、まずはパリへ行ったのです。その時に出会いました。
© 1995 Castle Rock Entertainment.
04仕事とのリンク
『ビフォア・サンライズ』は、フランス人女性のセリーヌとアメリカ人男性のジェシーがヨーロッパで出会うという作品なのですが、作品の中でセリーヌは英語で会話をしています。3部作の一作目であるこの作品では少し拙い、フランス語訛りの英語ですが、彼女は「自分は何が好きで、どういうことを思っているのか」ということを自分の言葉で、はっきりと話していました。私も海外で仕事をする上で、英語で自分を表現することは必須なので、彼女の凜とした姿に勇気づけられました。また、その映画を見たとき、イギリスでの新しい生活と出会いに夢と希望がふくらんだ記憶があります。
05作品から受けた影響
海外で仕事をしている時、この映画を思い出すことがあります。どんな環境でも、自分らしく、母国語に関係なく人とコミュニケーションをとる彼女の姿です。英語で自分を表現することは難しいと感じることもあり、その度に、「言語は関係ない、私には伝えたいことがある」と思っている自分と彼女の姿とを重ねていたのかもしれません。
アニメーションでの私の仕事は、何もない、まっさらな状態から絵を書き起こすことが多く、監督が表現したいことの口頭説明を元に、画面作りをするのでコミュニケーションが大事なんです。自分の意見や考えを監督や他の同僚と話し合い、私の日本での経験がより良い画面作りへと反映されることもあり、言語の壁を越えて自分を表現することの大切さを学びました。
06作品の魅力
ヨーロッパで出会った男女の恋愛というすごくシンプルなお話ですが、二人がお互いのことを知っていくのと同じ目線で、観客も二人のことを知っていくドキュメンタリーのような作品です。二人の演技がすごくナチュラルで、細かな感情がみずみずしく描かれているところにも惹かれます。
また、ヨーロッパの街並みもキレイなので、一緒にウィーンの街を冒険しているような感覚になれる映画です。続編も二人の9年後を描いているのですが、それもまさかの実際の9年後に撮るという少しクレージーなまでにリアルさを追求している作品です。普段恋愛映画を見ない人も楽しめる作品な気がします。
© 1995 Castle Rock Entertainment.
07下窓さんのお仕事について
――現在の下窓さんのお仕事を教えてください。
今はマガジンハウスさんと一緒に描き下ろしの漫画を描いています。たまにイラストの仕事やアニメーションの仕事が入ることもあるので、並行しながら創作活動をしています。
――cakesで連載していた「ロンドン暮らし、恋暮らし。」を拝見させていただきました。今はアメリカ在住ですが、はじめはロンドンにいらっしゃったんですね。
海外はアメリカの後、ロンドンに行って、その後フランスに行っていました。今は結婚してアメリカに戻ってきたという感じです。
――「ロンドン暮らし、恋暮らし。」は、ご自身の体験が反映されているのでしょうか?
そうですね。漫画を描くうえで、自分が経験したことや感じたことから生まれることが多いので、ロンドンへ行ったときに苦労したことや、楽しかったことなどを少し反映しています。ルームメイトと恋に落ちたこととかは無いですけど(笑)。
――映画『犬ヶ島』(2018)にもアニメーターとして参加されていたのですね。どの辺りを担当されていたのでしょうか?
『犬ヶ島』はパペットアニメーションなんですけど、テレビ画面などは2Dアニメーションなんです。そのシーンが2時間の中でトータル10分強くらいあって、その部分を一部担当して描いていました。
――ありがとう御座いました!
08プロフィール
下窓まめ子(したまど まめこ)
アメリカ在住の漫画家。アニメーションやイラストなども手がける、職人気質のクリエーター。cakesにて著作「ロンドン暮らし、恋暮らし。」現在、マガジンハウスと描き下ろしの漫画を鋭意製作中。
noteにてマガジン「絵で綴る、アメリカ」を気ままに更新中。
https://note.com/mameko_s
photo:宇田川俊之
edit&interview:Sayaka Yabe