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Do it Magazine01木工職人 岡本明久さんのシゴトとシネマ
映画との出会いはいつも偶然で、何気なく観た映画が、人生の一本になったりする。【シゴトとシネマ】では、仕事や生き方に影響を与えた、働くことの原動力になっている映画とエピソードを教えていただきます。今回は、木工職人の岡本明久さんの人生を揺るがせた映画と、仕事への想いをご紹介。
※感染防止に配慮して撮影しております。
02作品名
映画『パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち』
監督:ゴア・ヴァービンスキー
『パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち』
MovieNEX発売中/デジタル配信中(購入/レンタル)
発売:ウォルト・ディズニー・ジャパン
© 2022 Disney
03作品との出会い
私は、施設やイベントや映像の美術の小道具を作る「プロップアート」という仕事を木工専門にしています。いつも作品を作るときのヒントとして、よく映画を観ているのですが、この作品もその一つで、DVDのレンタルショップで見つけて、何かヒントがないかアイディアを探すときによく観ている作品です。
04シゴトとのリンク
『パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち』に限らず、映画は研究のために観ています。
でも実は、映画の内容は全然わからないんですよね。ほとんど小道具の参考として観ているので、画面の端に映ったものや主人公の周りの景色など、そういうものしか頭に入らないんです。壁にかかっているものの色とか形をヒントにし、自分の形に変えながら作っています。
05作品から受けた影響
一言でいうと、全体の雰囲気です。単に僕がこの映画の世界が好きなんですね。
ごちゃごちゃしている質感がいいなと。でも、ただごちゃごちゃしているだけではなく、その年代のイメージにあった統一感があります。その統一感は作品にとってはすごく大事で、私もそこは意識して作るようにしています。
06インタビュー
――このお仕事を始めたきっかけは何ですか?
学生の頃はずっと船乗りになりたいと思っていました。船や海に憧れていたんです。大学1年生の頃、『荒い海』という作品を観て、衝動的に船乗りになろうと強く思って。それから大学を卒業してトローリングの会社に入ったんですけど、いざやってみるとちょっと違う感じがして……。すぐに辞めました(笑)。その後、34歳くらいから自分でアウトドアショップを始めたんですけど、だんだんとただ売るだけでは面白くなく感じてきてしまって。アウトドアスポーツの教室の先生として働いたり、アウトドアメーカーのイベントのステージを組んだり、いろいろなことをしてました。
そんなとき、友達がやっていたログハウスの会社で、自分の趣味としていろいろな木の造作を作るようになったんです。そこからどんどん作ることにのめり込んでいって、独学で毎日いろいろなものを作るようになりました。それが、少しずつお店や企業から依頼が来るようになって、ますます作ることにハマっていって、今があります。
――今のお仕事ではどんなところを大切にしていますか?
自分らしさを大切にしています。海外で仕事をしたことも、アウトドアショップをやったことも、映画を観たことも、そういういろいろな人生の経験が引き出しとなっているんです。そこからだんだんと自分の形として出来あがってきた感覚があるので、常に情報を取り入れるようにしています。
――映画以外からも、影響を受けることは多いですか?
もちろん、映画に限らず全てが参考になっています。なのでニュースもテレビの旅番組も毎日チェックしています。
究極、目に映る全ての景色が作品のヒントとして頭に入ってくるんです。ずっとそういう感覚で過ごしているからその習慣が抜けないんですよね。目が覚めてから寝るまでずっとそれが続いていて、毎日新しいものを探しています。
――このお仕事で大変なことや辛いことはどんなことでしょうか?
作りたいものはたくさんあるのですが、自分の形に変えるまでにすごく時間がかかります。パッと浮かぶ時もあるけれど、1週間、1ヶ月考えても浮かんでこない時もあります。自分の中でアイディアが見つけられない限り作れないので、その時は苦しいですね。
――このお仕事でやりがいを感じるときはどんなときですか?
辛いことの裏返しになりますが、自分で考えて作ることにやりがいを感じます。すでにあるものと同じものを作って欲しいと依頼されるよりも、ある程度お任せされて作る方が、自分で考えられますし、満足感と面白さがあります。考えることは大変ですが。
――今後やってみたいことはありますか?
この仕事で空想の世界を作りたいです。自分らしさのある、現実離れした、今までにないものを作れたらいいなと。これからもそんな気持ちでこの仕事を続けたいと思っています。
07プロフィール
岡本明久(おかもと あきひさ)
木工職人
photo:Shota Watanabe
interview&text:Chinami Miyahara