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Do it Magazine01Do it Close-up (ドゥイット クローズアップ)
Do it Theaterの宮原千波が、今気になるシアターカルチャー(シアターにまつわるカルチャーのあれこれ)をクローズアップし、レポートとしてお届けする企画です。
年に一度、東京で行われるアジア最大級の国際映画祭。
今年は「飛躍」をテーマに、10月24日(月)〜11月2日(水)の10日間に渡って日比谷・銀座・有楽町エリアを中心に開催されました。
今回、私はオープニングセレモニーと屋外上映会へ行き、東京国際映画祭に参加してきました!実は映画祭に行くのは初めてで、プレスとして専用エリアに座らせてもらうことも初めての経験でした……。初めてのことばかりで緊張しましたが、そのときの様子を含めDo it Theaterの観点から、レポートをお届けします。
さまざまな部門からノミネートされた作品や、往年の人気作品など、10日間で上映された作品数はなんと169本!動員数は59,414人という過去最高の盛り上がりをみせました。
目次
①Do it Close-up
②今年の東京国際映画祭の内容は?
③10月24日(月) レッドカーペット&オープニングセレモニー
④10月31日(月) 『E.T.』屋外上映会に参加
⑤11月2日(水) クロージングセレモニー
⑥おわりに
02今年の東京国際映画祭の内容は?
今年の東京国際映画祭の上映作品は、多彩な主要9部門によって構成されました。
・コンペティション 部門
(107の国と地域、1,695本の応募の中から15作品選出された作品)
作品例:『窓辺にて』,『ザ・ビースト』など
・アジアの未来
(アジアの新鋭監督の作品10作品を上映するコンペティション)
作品例:『アルトマン・メゾット』,『蝶の命は一日限り』など
・ガラ・セレクション 部門
(日本公開前の最新をプレミア上映)
作品例:『母性』,『月の満ち欠け』など
・ワールド・フォーカス 部門
(日本での公開が未定の国際映画祭の話題作品を上映)
作品例:『ラ・ハウリア』,『パシフィクション』など
・ユース 部門
(少年少女に映画の素晴らしさを体験してもらう部門)
作品例:『セルヴィアムー私は仕えるー』,『ザ・ウォーター』など
・Nippon Cinema Now 部門
(海外に紹介されるべき日本映画の新作を上映)
作品例:『百花』,『彼方の閃光』など
・ジャパニーズ・アニメーション 部門
(今年は「ゼロから世界を創る」というテーマに沿った日本のアニメ映画を上映)
作品例:『雨を告げる漂流教室』など
・日本映画クラシックス 部門
(デジタルリマスターされたディレクターズ・カンパニー作品4作品を上映)
作品例:『台風クラブ』,『DOOR』など
・TIFF シリーズ 部門
(TV放映、インターネット配信等を目的に製作されたシリーズものの秀作を上映)
作品例:『ガンニバル』,『仮面ライダーBLACK SUN』など
それぞれの部門でノミネートされた作品がエリア内の映画館で上映されました。
その他、「黒沢明賞」という世界の映画界に貢献した映画人や映画界の未来を託していきたい人に贈られる賞が14年ぶりに復活。今年の「黒澤明賞」では、Do it Theaterが2020年にコロナ禍で自主企画した「ドライブインシアター2020プロジェクト」のクラウドファンディングにて賛同いただいた深田晃司監督が受賞しました。
今年の東京国際映画祭のイベントとしては、その「黒沢明賞」の復活を祝して黒澤明監督の愛した映画の上映や、映画人が集まり交流し、そのトークセッションを聞くことができる「交流ラウンジ」、無料で参加できる屋外上映会など、さまざまなテーマに基づき、エリアのあちこちで映画上映・交流が繰り広げられました。
<第35 回東京国際映画祭 開催概要>
■開催期間:2022年10月24日(月)~11月2日(水)
■会場:日比谷・有楽町・丸の内・銀座地区
■公式サイト:www.tiff-jp.net
0310月24日(月) レッドカーペット&オープニングセレモニー
レッドカーペット
オープニングイベントは10月24日(月)の夕方に行われました。
セレモニーは東京宝塚劇場のホール内で行われ、東京ミッドタウン日比谷から東京宝塚劇場に向かって、レッドカーペットが敷かれていました。
レッドカーペットは3年ぶりの開催。今回上映されるさまざまな作品の監督やキャストがステージに登壇し、レッドカーペットを歩きます。
Do it Theaterのイベント会場でもよく登場するレッドカーペット。私たちにとって馴染みのあるアイテムですが、ここでのレッドカーペットは歩く監督やキャストたちを鮮やかに照らし、華やかさと厳粛さを感じる空間を作り上げていました。
その様子はYouTubeのライブ配信で生中継されました。
今年のオープニング作品は『ラーゲリより愛を込めて』。
会場には主演の二宮和也さん、瀬々敬久監督が登場しました。
©2022 TIFF
フェスティバル・アンバサダーは橋本愛さん。
©2022 TIFF
素敵な衣装で登場し、映画祭の魅力をこう語りました。
「(映画を観ることは)今は自分で時間を作って好きな作品を選んで、例えばお家で観るという、とても個人の主体性が強いものだと思うんです。映画祭で映画を観るという体験は、決まった時間に決まった作品が決まった場所で上映されている、ある種の制約に自分が向かっていくことで出会える、とても特別なご縁になると思います。みなさんぜひ気軽に遊びにいらしていただけたら嬉しいです」
©2022 TIFF
さらに、Do it Theaterと交流のある中川駿監督の『少女は卒業しない』がアジアの未来部門でノミネート。今回の作品は中川駿監督の初の長編作品とのことで、キャストの皆さんと登場しました。中川駿監督にはDo it Theaterの「ドライブインシアター2020」プロジェクトに賛同いただき、ドネーションTシャツ用のサインをいただきました。
その他にも、ノミネート作品の紹介に合わせ、監督や役者、審査員の方々がレッドカーペットを歩きました。
©2022 TIFF
©2022 TIFF
©2022 TIFF
オープニングセレモニー
オープニングセレモニーにはプレスとして取材させていただきました。会場に入ることができるのは、メディアと東京国際映画祭のクラウドファンディング支援者のみに限定されていましたが、国際色豊かな会場内は、映画についてさまざまな想いを持つ人たちが、”映画”を通じて集う空間となっており、その繋がりをひしひしと感じることができました。
セレモニーの様子はYouTubeで配信されていました。
まずは、オープニングアクトとして宝塚OGによるスペシャルパフォーマンスが披露されました。初めて宝塚のパフォーマンスを目にした私は、圧倒的な美しさと歌声のパワーに感動……!
©2022 TIFF
その後、各部門の紹介やフェスティバル・アンバサダーの橋本愛さんによる挨拶、『ラーゲリより愛を込めて』の二宮和也さんと瀬々敬久監督によるトークショーなどが行われました。
その中でも私が一番印象に残ったのは、コンペティション部門審査委員長ジュリー・テイモアさんの挨拶です。
©2022 TIFF
「自分自身がアーティストとしていつも重要だと思っていることは、自分が行きたいとは知らなかった場所に映画を通じて出会うことができることです。世界はコロナや戦争、いろいろな形で人々が分断しています。でも、こうして映画を観たり、映画祭を通して想像力で一つになれるという思いをみんなで持つことは非常に大事だと思います。映画を観て私がこれまで知らなかった人や場所を知り、共感していくということ、それは今私たちに欠けているものだと思うので、それをこの東京国際映画祭で得られたらと思います」
この1日を通して、多くの企業や映画館や街、そしてたくさんの人が映画に関わり、それぞれの想いを持って繋がっていることを感じました。
ただ映画を観るだけでなく、“映画と向き合う体験”としての価値を考えさせられる貴重な機会となりました。
0410月31日(月) 『E.T.』屋外上映会
東京ミッドタウン日比谷の日比谷ステップ広場では、期間中に特設ステージが登場し、日中から夜まで全23本の映画が無料上映されました。
©2022 TIFF
映画祭の上映作品は公開前の作品や作家性の高い作品が多い印象ですが、この屋外上映会では、『スパイダーマン』や『ストーリー・オブ・マイライフ』、『コーダ あいのうた』 や『未知との遭遇』45周年記念上映など、人気作品の上映が行われていました。
ちなみに私は『E.T.』40周年記念映像の上映と上映前トーク付きに参加してきました!
トークショーではゲストに笠井信輔さんと山之内すずさんが登壇し、『E.T.』の制作秘話や『E.T.』の魅力を解説していました。
会場の熱量が高まってきたところで、映画の上映がスタート。
平日にも関わらず、若者や親子連れ、ご高齢の方など幅広い年代の方が集まり鑑賞していました。会場にはテーブルや椅子が準備され、座ってご飯を食べながら観る人や、広場の階段に座って観ているなど、思い思いの楽しみ方をして過ごしていました。
中には『E.T.』のパーカーを着ている人やE.T.のぬいぐるみを抱えている子どもも。
さらにスクリーン横では、40周年を記念した特別パネル展として、撮影初期段階に制作されたコンセプトアートや撮影時に使用された絵コンテが並び、E.T.と一緒に写真が撮れるフォトブースも設置されていました。
Do it Theaterも屋外上映のイベントを数多く手がけてきているので、屋外上映の魅力は充分に知っていましたが、改めて素晴らしさを体感。日比谷のビル群に囲まれた中、広場の開放的な空間でみんなで映画を観ることができるのは、特別感があってやっぱりいいなとしみじみ感じました。
0511月2日(水) クロージングセレモニー
10日間の東京国際映画祭の最後は、東京国際フォーラムで行われたクロージングセレモニー。コンペティション部門の各賞の発表と授賞式が行われました。
©2022 TIFF
東京グランプリ/東京都知事賞に輝いたのは、『ザ・ビースト』(スペイン/フランス)。また、本作のロドリゴ・ソロゴイェン監督は最優秀監督賞、主演のドゥニ・メノーシェは最優秀男優賞を受賞しました。
©2022 TIFF
<コンペティション部門の受賞一覧>
東京グランプリ/東京都知事賞:『ザ・ビースト』(スペイン/フランス)
審査員特別賞:『第三次世界大戦』(イラン)
最優秀監督賞:ロドリゴ・ソロゴイェン監督『ザ・ビースト』(スペイン/フランス)
最優秀女優賞:アリン・クーペンハイム『1976』(チリ/アルゼンチン/カタール)
最優秀男優賞:ドゥニ・メノーシェ『ザ・ビースト』(スペイン/フランス)
最優秀芸術貢献賞:『孔雀の嘆き』(スリランカ/イタリア)
観客賞:『窓辺にて』(日本)
アジアの未来:作品賞『蝶の命は一日限り』(イラン)
AmazonPrimeVideoテイクワン賞:該当者なし
特別功労賞:野上照代
06おわりに
私は映画祭に参加したのは今回が初めてで、正直こんなに部門やイベントが盛りだくさんだったとは知らず驚きました。
一部のプログラムだけの参加でしたが、このエリア一体が映画祭で賑わっている様子や、映画を通じてたくさんの人が集い、コミュニケーションをとっている様子を見ることができ、これが映画祭の魅力なんだと感じることができました。
そして、映画祭の楽しみ方は人それぞれでいいと思います。
映画祭の期間、少し意識して周りを見渡すと街が映画の雰囲気に染まっていたり、街の人々が少し浮き足だっていたり。そんな雰囲気を感じるだけでも映画祭は楽しいかもしれません。
来年はノミネート作品をもっと観に行って、まだ国内での公開が決まっていない世界中のたくさんの作品の中から、自分だけの推し作品を見つけたいと思います!